令和6年3月の高校卒業生の就職率は98.0%と、前年と同じ高水準を記録しました。文部科学省の調査によると、専門学科や地域によって就職率に大きな違いが見られます。この記事では、学科別・地域別の就職率の違いや、高卒者に人気の業界について解説します。
高卒就職率の現状
文部科学省が発表した令和6年3月の高校卒業者の就職状況によると、全国の卒業生925,339人のうち、就職希望者は129,907人でした。就職希望者のうち127,266人が就職を決めており、就職率は98.0%となっています。男女別で見ると、男子の就職率は98.4%、女子は97.2%と、男子の方がやや高い結果となりました。全体の就職率は前年と同じ水準を維持しており、高校生の就職状況は安定しています。
学科別でみる高卒就職率の特徴
高校の学科によって就職率には大きな差が見られます。専門的な技術や知識を持つ学科は特に高い就職率を誇り、各業界から高い評価を受けています。学科選択は将来の就職にも大きな影響を与える重要な要素となっています。
専門学科の就職率
専門学科の中で最も就職率が高いのは、工業学科で99.5%を記録しています。2番目に高いのは水産学科の99.2%です。商業学科と福祉学科はともに98.9%で3番目に高い就職率となっています。情報学科は98.8%、農業学科は98.7%と続いています。
家庭学科は98.4%、看護学科は98.3%となっており、専門学科全体として高い就職率を維持しています。このように、いずれの専門学科も95%を超える高い就職率を示しており、専門的な学びが就職に活かされている状況が見られます。
普通科と総合学科の就職率
普通科の就職率は95.9%で、専門学科と比べるとやや低い数字となっており、総合学科は97.7%と普通科より高い就職率を示しています。総合学科では、生徒が自分の興味や適性に応じて科目を選択できる特徴があり、この柔軟なカリキュラムが就職活動にもプラスの効果をもたらしていると考えられます。
地域別にみる高卒就職率の実態
高卒就職率は、地域によって大きな差があり、地域の産業構造や経済状況が影響を与えています。各地域の特性を理解することは、就職活動を考える上で重要な要素となります。
就職率が高い地域の特徴
福島県と富山県は就職率が99.9%と全国トップの数字を記録しています。北陸エリアは製造業をはじめとした基盤産業があることで知られており、正規雇用者として働く人の割合が全国平均よりも高いです。
とりわけ富山県は若年層(15歳〜34歳)の正規雇用が全国トップで、正社員として安心して働ける環境が整っています。福井県は99.8%、三重県は99.7%と続き、秋田県、和歌山県、香川県、広島県はそれぞれ99.6%と高い就職率を示しています。
就職率が低い地域の課題
沖縄県は就職率が90.7%と全国で最も低く、次に低い神奈川県は91.9%となっています。沖縄県の場合、就職活動の開始時期が遅い傾向にあり、琉球放送RBC NEWSによると、採用活動の解禁日までに準備が整っていないケースが多いと指摘されています。沖縄県の高卒就職内定率は26.9%と21年連続で全国最下位となっており、地域特有の課題です。
一方、神奈川県や千葉県では、進学率が高く就職希望者の割合自体が低いという特徴があります。都市部では企業の選択肢は多いものの、競争も激しく、就職活動により入念な準備が必要とされています。
高卒就職率の37年間の推移
高卒就職率は、日本の経済状況に大きく影響を受けてきました。特に1993年から2005年頃までの就職氷河期には、就職環境は厳しい状況でした。この時期、2000年には大卒者の無業者率が22.5%に達し、5人に1人が大学卒業後に進学も就職もできない状況となりました。
その後、2008年に発生したリーマンショックの影響で2010年に再び就職率は低下しましたが、その後は回復基調が続いています。現在は新型コロナウイルスの影響下でも高い水準を維持しています。
厚生労働省の発表によると、2024年3月卒の高校生の新卒採用の求人倍率は3.79倍と、バブル時代を超える「売り手市場」の状況となっています。企業は若年層の採用活動において日々困難に直面しており、採用活動や働き方、教育などを見直し、高卒新卒者の採用に力を入れている状況です。今後も高卒就職の就職率は高い水準を維持することが予想されます。
高卒者に人気の業界と職種
現在の高卒者の就職先は多岐にわたり、様々な業界で活躍の場が広がっています。特に専門学科の生徒は、在学中に身につけた技術や資格を活かせる職場に就職するケースが多く見られます。
注目される業界の動向
IT・通信分野では、デジタル化の加速に伴い、若い人材への期待が高まっています。特にプログラミングやネットワーク管理などの技術職での採用が活発です。情報技術科の卒業生は、電力会社や電子機器メーカーのほか、プログラマーやエンジニアとして就職するケースが増えています。
製造業では、工業高校出身者を中心に技術職での採用が盛んです。工場の生産管理や品質管理、機械オペレーターなどの職種で、専門的な知識を持つ高卒者への需要は高い状況が続いています。
医療・福祉分野では、高齢化社会を背景に人材需要が拡大しています。福祉学科の卒業生は、介護施設や病院での就職が多く、資格を活かした専門職として活躍しています。建設業界も人材不足が続いており、施工管理や建築設計などの技術職で高卒者の採用を積極的に行っています。
将来性のある職種
技術職は、多くの業界で深刻な人材不足が続いており、高卒者の採用ニーズは高い状況です。特に工業高校出身者は、製造業や建設業での技術職として高い評価を受けています。IT関連職種では、システムエンジニアやプログラマーとしての採用が増加傾向にあります。情報技術の進歩に伴い、若い世代の柔軟な発想力や適応力が重宝されているのです。
事務職では、経理や総務などの専門知識を持つ商業科出身者への需要が安定しています。デジタル化が進む中、PCスキルを活かせる職場が増えています。専門職では、介護福祉士や保育士など、資格を活かした就職が可能です。これらの職種は慢性的な人材不足が続いており、安定した雇用が期待できます。
まとめ
高卒の就職状況は、全体として良好な水準を保っています。学科別では工業学科が最も高い就職率を記録し、地域別では福島県と富山県が全国トップとなっています。様々な業界で採用意欲は高く、特に専門的な技術を持つ人材への需要は堅調です。就職を考えている方は、ReFeelの求人情報から、自分に合った企業を探してみてください。豊富な求人情報の中から、希望の職種や勤務地で絞り込んで検索することができます。